遊休地の11の活用方法と向き・不向き、メリット・デメリットを解説

土地活用

2022年8月3日

ほったらかしで困っている土地があり、「何とかしなければ」と頭を悩ませている所有者の方も多いことでしょう。

せっかくの土地をそのままにしておくのはもったいないですよね。税金などの観点からも、ぜひ有効に活用したいところです。

活用されず「遊んでいる」「休んでいる」状態の土地は、文字通り「遊休地」と呼ばれ、国も活用をすすめています。

この記事では、遊休地を活用する11種の方法と、そのメリットや向いている土地の特徴などについて紹介していきます。ぜひ参考にしてください。

遊休地を活用した方がいい理由

活用できる土地を活用せずそのままにしておくことは、所有者にも地域にとってもメリットがありません。それどころかデメリットとなることも。

まずは、「遊休地」の定義と、放っておくことのメリット・デメリットについて知っておきましょう。

そもそも遊休地とは

冒頭にも触れたように、遊休地とは活用されていない土地のことをいいます。政府は、遊休地も国の重要な資源だとして、積極的な活用を促しています。

遊休地に関しては、「国土利用計画法」という法律に定義がされており、簡単に言うと次のような土地をいいます。ちなみに法律上は「遊休土地」と呼ばれます。

  • 一定以上の広さがあること
  • その土地を取得して2年が過ぎていること
  • まったく、あるいはほとんど利用されていないこと
  • 周辺の状況から、利用を促す必要があること

当てはまる土地がある場合、所有者には遊休地であることの通知が届きます。通知が来たら、6カ月以内にその遊休地をどうするか、活用するか処分するかについての計画を届け出なくてはなりません。

遊休地を放っておくことのデメリット

利用すべき土地を何にもせず放っておくことには、金銭面でも周囲との関係性の面でもデメリットがあります。

まず、前項でお伝えした、遊休地についての利用計画の届け出について。この届けを出さずに放置すると法令違反となり、6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。

また土地には、利用していても利用していなくても、所有しているだけで税金がかかります。遊休地は金銭的な利益を生まないので、所有者にとって単なる負担ともなりかねないのです。場所によっては、価値もどんどん下がっていきます。

さらに、遊休地として管理をせずにいると、雑草が生い茂り、ゴミ捨てや不法投棄の温床となる可能性もあります。そうなれば周辺住民から苦情も出るなどして、管理責任を問われかねません。雑草や投棄されたゴミなどの処分にも、費用がかかってしまいます。

遊休地を活用することで得られるメリット

遊休地を活用することで、次のようなメリットが得られます。

  • 収益が得られる
  • 節税になる
  • 土地の健全さを維持できる
  • 地域に貢献できる

最も大きなメリットは、それまで遊ばせておいた土地で収益を得られるようになることです。住居などを建てて活用することで、固定資産税などの優遇が受けられる可能性も高く、土地にかかる税金の負担も減らせます。

常に管理された状態であれば、不法投棄などをされることもなく、健全な状態が保てます。

また、見た目だけでなく収益もあれば、地域の活性化など直接的に、あるいは所得税の納税などで間接的に、地域に貢献することができるのです。

活用方法を決める前に知っておきたいこと

遊休地の活用方法を決める前に、その土地がどのような区域・地目なのかを確認しておきましょう。土地は、所有者だからといって使いみちを自由に決めることはできません。

日本国内の土地は、都市計画法に基づき「都市計画区域」と「都市計画区域外」の大きく2つに分けられます。都市計画区域には、さらに「市街化区域」や「市街化調整区域」があります。

都市計画区域と、都市計画区域外の一部に設けられる準都市計画区域では、建てられる建物やその大きさなどに制限が設けられています。

また、不動産の登記事項の1つである「地目」にも注意が必要。たとえば地目が「田」や「畑」となっている土地は転用に制限があり、勝手に建物を建てたりはできません。

現状と異なる方法で活用するには届け出が必要だったり、そもそも変更が不可能だったりする可能性があるのです。

遊休地の主な活用方法11種を一覧で紹介

ではいよいよ、遊休地の活用方法について考えてみましょう。主な活用方法として次の11種を紹介します。

  • 賃貸アパート・マンション
  • 商業施設
  • オフィスビル
  • 医療系施設
  • 介護施設
  • 駐車場・コインパーキング
  • コインランドリー
  • 太陽光発電
  • コンテナ型トランクルーム
  • 資材置き場
  • 農地・農園

大がかりなものから手軽に始められそうなものまで、土地活用にはさまざまな方法があります。それぞれに、収益性の高さや社会貢献度の高さなども異なります。

また、場所や広さなどによって、向き・不向きやメリット・デメリットが異なります。次の章からは、それぞれの活用方法について主な特徴別に見ていきましょう。

収益性や節税効果の高い活用方法

まずは、高い収益や節税効果が期待できる活用方法です。

賃貸マンション・アパート

土地活用と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、マンションやアパートの経営ではないでしょうか。

家賃収入は景気などによる変動が少なく、安定的な収入が得られることが大きなメリット。初期費用にかかったローンを家賃収入で返済していけるほか、建物を建てて人に貸すことで固定資産税や相続税の節税も可能になります。

ただし、初期費用としてかなり高額な資金が必要です。融資などによる資金調達は不可欠でしょう。立地などによって空室が発生するリスクもありますし、維持管理や修繕などの費用もかかります。

また、建物の一部を自宅とする賃貸併用住宅も、有効な土地活用方法として注目されています。自分も住みたい土地であり、収益性や節税効果も考えるのであれば、賃貸併用住宅も視野に入れるとよいでしょう。

▼賃貸併用住宅のメリットなどについて詳しくは、こちらの記事で解説しています。

コンビニや飲食店などの商業施設

道路に面した場所に土地がある場合には、飲食店などの店舗にする方法もあります。土地が広大であれば、ショッピングセンターや家電量販店などの大規模商業施設としての利用も可能です。

ただし、人通りや車通りが常にある場所でないと収益が期待できません。郊外なら、駐車スペースの確保は必須です。また、商業施設は流行に左右されやすいというデメリットもあります。

不特定多数の客の出入りや駐車などによって、近隣住民からの苦情やトラブルが発生するリスクも。その対策を練っておく必要もあるでしょう。

オフィスビル

駅近くの都市部などの好立地であれば、オフィスビルにも高いニーズがあり、安定した収益が見込めます。

賃貸料は住宅としてよりも高く、建築基準法の要件も住宅ほど厳しくありません。

ただし、ビジネス目的の入居なので、景気に左右されやすいのが大きなデメリット。テナント企業の業績が悪化すれば、ビルに問題がなくても短期間で退去されてしまうことになります。オフィス街なら、他との差別化なども必要です。

先を見据えておかなければ、地域全体の人気度が下がってテナントが入りにくくなってしまうリスクも避けられません。

社会貢献度の高い活用方法

次に、社会に大きく貢献できる活用方法を紹介していきます。

医療施設

少子高齢化が著しい我が国で大きく社会貢献できる土地活用といえば、病院やクリニックといった医療施設を作ることです。

今後は、病気にかかる前から対策をしていく「予防医療」にも注目が集まると予想され、ビジネスとしてのチャンスがあるとも考えられています。

医療施設には入院が可能な病院や小規模なクリニックなどの種類があり、土地の広さによる選択が可能です。

ただし借主は、医療法人や個人の開業医などに限られます。建物を建てて貸す方法と、土地をそのまま貸す方法がありますが、いずれにしても借主を探すには専門業者の手を借りなくてはいけません。

介護施設

高齢者の多い地域や、介護系の施設が不足している地域なら、介護施設を作ることでも社会に大きく社会に貢献できます。

この場合、土地の所有者が施設の経営を行うのではなく、建築した建物を介護事業者に貸し出して家賃収入を得る、いわゆる「一棟貸し」が一般的です。

一棟貸しであれば、管理の手間もほぼありません。賃貸することで節税効果も高くなります。ただし、施設の建築など初期投資に多額の費用がかかるデメリットも。施設には面積のほか、構造などについて細かな基準があり、そのぶん建築の費用もかさみます。

介護施設と一口に言っても、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、デイサービスなどさまざまな形態の施設があります。ニーズの高さや自治体による数の制限(総量規制)などもあるので、まずは建設業者などに相談する必要があります。

手間を抑えた活用方法

大がかりな事業の経営には関わりたくない、なるべく手間をかけずに遊休地を活用したい、という場合には、次のような方法がおすすめです。

駐車場・コインパーキング

それほど広いスペースでなくても可能なのが、駐車場やコインパーキングの経営です。

固定客に安定的なニーズが見込めるのであれば、月極駐車場として契約できます。駐車スペースを区切ればよいだけで、初期費用も低く抑えられます。

コインパーキングなら、入れ替わりが多く稼働率が高いほど収益も高くなります。より手間を省くには、業者に委託する方法もあります。

また、駐車場やコインパーキングであれば、経営が上手くいかなかった場合にも比較的容易に別の活用方法に切り替えられるというメリットも。

ただし、駐車場やコインパーキングのニーズがあるのは主に都市部。郊外では駐車場の広い商業施設なども多く、必要とされなければ十分な収益が得られません。都市部でも、公共交通機関の利用がメインで車の利用者が少ない場所には向きません。

コインランドリー

コインランドリーの経営も、土地活用として人気のある方法の1つ。広いスペースが必要ないため、狭い土地の有効活用として注目されています。

人が常駐する必要がなくランニングコストも少なくて済むこと、繰り返して利用する人が多いことなどから、安定した収益が期待できます。

ただし、コインランドリーも立地が重要です。近所への騒音を気にしたり物干しのスペースが限られたりする都市部、共働き世帯が多い地域なら多くのニーズが見込めるでしょう。

とはいえ、競合となる店が多い場合には客の奪い合いになる可能性も。低価格を余儀なくされないよう、他店との差別化を図る工夫も必要です。その場合は、フランチャイズに加盟して知名度や経営ノウハウを活用するのも1つの方法です。

太陽光発電

郊外などによく見られるのが、太陽光発電のパネルが並ぶ光景です。太陽光発電は原子力発電のような危険性も二酸化炭素の排出もなく、持続可能なエネルギーの代表格と言えます。

自身で太陽光エネルギーの事業を行い、集まった電力を電力会社に買ってもらうほか、太陽光発電の事業者に土地を貸し出す方法もあります。

ただし太陽光発電による電力をすべて買い取ってもらうには、総出力が50kW以上なくてはなりません。複数のパネルを並べられる広さが必要です。

太陽光発電に向いているのは、何と言っても日当たりがよく、日射量が豊富な場所です。また、送電線が近くにある場所が便利です。

建物などの陰になっている場所や、雨や曇りの日が多い地域では、十分な発電ができません。台風や梅雨など、季節によっても発電量に差が出ます。また、パネル設置やフェンスの設置などが必要となり、初期費用が高いこともデメリットの1つです。

コンテナ型トランクルーム

トランクルームとは、個人や企業に対して貸し出す収納スペースのこと。ビルなどの建物内に個別スペースを作る屋内型と、屋外に積んだコンテナを貸し出すコンテナ型がありますが、より手軽な土地活用として使えるのはコンテナ型の方です。

建物を建てるには狭い土地でも運営できるほか、コンテナは置くだけなので建築費用もかからず、頑丈なので修繕などの必要もほとんどないでしょう。別の目的ができて転用するにも、解体など大がかりな工事は不要です。

ただし、建物を立てないので固定資産税や相続税の節税にはなりません。また、コンテナ型トランクルームは場所を選びます。更地にコンテナが並ぶ様子から、都市部では景観を損なうと考えられるため、屋内型が一般的です。

トランクルームの経営は、自身で行っても手間が比較的かからず済みますが、トランクルームの経営事業者に委託することでさらに手間なく土地活用ができます。

資材置き場

開発中の地域や郊外などでは、工事中の資材を一時的に保管する資材置き場として建設業者などに貸し出す方法もあります。

建物を立てたりする必要はなく、そのまま貸し出せばよいため、費用負担はほとんどありません。また、資材が持ち運ばれ契約が終われば、別の活用方法への転用も簡単に行えます。

ただし、単なる土地としての活用なので、固定資産税や相続税などの節税にはなりません。また、収益も高いとは言えません。

場所によっては、搬入のトラックなどが出入りすること、大きな音や振動が発生しやすいことから、近隣住民とのトラブルが起きる可能性もあります。

農地・農園

遊休地が農地である場合、自分が農業を行う以外の主な選択肢は、農地として人に貸すか、果樹などの観光農園とする、もしくは農地以外への転用をすることが挙げられます。

もっとも簡単なのは、農地として近隣の農家に貸し出すことです。ただし今は後継者不足に悩む農家が多く、借り手を見つけるのが難しい可能性もあります。

都市部に近い土地なら、貸し農園として農作業に興味を持つサラリーマンや、家庭菜園がほしい家族などに貸し出すことも可能。観光農園なら地域の活性化につながる可能性もあります。

賃料などが収入になるほか、初期費用もほぼ必要ないというのが大きなメリットです。収益性はあまり高くはありませんが、食育の観点でも、人々に収穫の喜びをもたらす貴重な活用方法と言えるでしょう。

農地を別の用途に転用するのは、ハードルが高いです。自治体や農業委員会などに許可申請を行う必要がありますし、地域や条件によっては許可が下りないことも少なくありません。

遊休地を有効活用するポイント

遊休地の活用方法はいくつもありますが、その土地を有効に活用するには、メリットやデメリットだけでなく、次のようなポイントを押さえて決めることも重要です。

  • 自身が何を重視したいかを考える
  • 法律の規制を確認する
  • その土地に合わせた活用方法を選ぶ
  • その道の専門家に相談する

それぞれどういうことか説明していきます。

自身が何を重視したいかを考える

先祖から受け継いだにしても、新たに取得したにしても、土地は貴重な財産です。有効に活用するためには、やはり「自分がその土地をどうしたいのか」が重要なポイントとなります。

投資のために購入したのであれば、収益性が最優先。しかし先祖が大切にしてきた土地なら、単にお金が儲かればよいというわけでもないでしょう。

活用方法に迷う際は、その土地がどのように活用されれば自身にとっても地域にとっても有益なのか、改めて考えてみてください。

法律による規制を確認する

繰り返しになりますが、土地は、所有者だからといって自由に使えるわけではありません。場所などによってさまざまな法の規制を受けている可能性があり、違反すれば罰金などに科される恐れもあるのです。

その土地が都市計画区域に当たるのか、その中でも市街化区域なのかそうでないのか、用途がどのように決められているのかなどを確認してください。

特に建物を建てる場合には、建てても良い建築物と建ててはいけない建築物についても調べておきましょう。

用途の変更などが必要なら、自治体などに確認して適切な手続きを踏みましょう。

その土地に合わせた活用方法を選ぶ

遊休地を有効に活用するには、ニーズがあることが大切です。何を作ったとしても、ニーズがなければ遊休地に後戻りすることになりかねません。

誰かがマンション経営や駐車場経営で成功していても、自分の土地で同じように成功するとは限らないのが土地活用の難しいところです。

上で紹介した活用方法の中で、自分が持つ土地にどれが合うのかは、広さや所在する場所、周辺の状況などからも総合的に見て判断してください。

その道の専門家に相談する

どのように活用するかは、自分で決めることも大切ですが、専門家の意見を聞くことも大切です。

自分ではきっと上手くいくと思っても、実は何かしら上手くいかない要因が潜んでいることも。その土地がその活用方法に向いているかどうかについては、専門家なら経験や知識があるはずです。

活用方法としていくつか希望や候補があるなら、それぞれの専門業者に問い合わせて相談し、比較して決めることをおすすめします。

遊休地は専門家の手も借りて有効活用しよう

遊休地は、そのままにしておくよりも活用することが得策です。賃貸経営などを行えば節税効果が得られますし、賃料も入ります。

初期費用や手間を抑えようとすれば収益も低くはなりますが、人の役に立ったり、地域社会に貢献できたりするメリットもあります。

活用方法を決める際は、金銭的なメリットだけでなく、自分がその土地をどうしたいか、その土地が何に向いているかなども含めて総合的に判断することが必要です。

専門家の意見も聞いて、大切な土地を有効に活用してください。

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