耐震・免震・制震の違いは?マンションの構造の違いを詳しく解説

マンション基礎知識

2022年6月20日

地震の多い日本では、どこに住んでも地震を避けることは難しいでしょう。地震に備えて家の中で地震対策を施したり、保険に入ったりしている人も多いと思いますが、建物そのものが丈夫でないとどうしようもありません。

そこで今回は、マンションの耐震構造について詳しく解説します。耐震・免震・制震という3つの構造がありますが、マンション選びではそれぞれの違いを理解しておくことが大切です。

たとえ大きな地震が起きても安心して住み続けられるように、丈夫なマンション探しの参考にしてください。

耐震構造、制震構造、免震構造を比較

地震に対してどのような対策がとられているのか、建物の構造の違いをその特徴からわけてみます。耐震構造、制震構造、免震構造の3つがあり、このような違いがあります。

構造の違い特徴
耐震構造地震の揺れに耐えるようにした構造
制震構造地震のエネルギーを吸収して揺れを和らげる構造
免震構造基礎と建物の間に特殊な装置やゴムを設置し建物に揺れが伝わらないようにする構造

それぞれの構造の特徴について、次章から詳しく解説していきます。

建物自体が強い耐震構造の特徴

地震に対して強い建物を作るのが耐震構造です。柱や壁を補強財などで強化して、建物それ自体を強くするのです。建物はとても丈夫ですが揺れには強くないので、他の構造と比べると揺れを感じやすいです。

建物自体は丈夫で大きな揺れにも耐えてくれるのですが、階数が上になるほど揺れを大きく感じます。建物が倒壊することはないにしても、大きな地震の場合、壁の崩壊や家具等へのダメージは避けられないでしょう。

高層マンションですと上階はかなり揺れますので、低層マンションの方が向いています。

揺れを和らげる制震構造の特徴

制震構造は、自身のエネルギーを吸収して揺れを防ぐ構造です。建物の内部に制震装置を設置し揺れを分散しますので、耐震構造ほど揺れません。上の階に行っても揺れを抑えられることから、高層マンションなど高い建物に利用されている技術です。

日本では1980年代から研究が始まり、1989年に世界初の制震ビルが建築されました。大きな地震であっても揺れを抑えられるため、壁だけでなく柱などのダメージも抑えられます。

揺れを和らげることができれば、建物の内部にいる人を守ることができますし、外壁の損傷をおさえることで建物の周りにいる人も被害も少なくなるでしょう。

揺れを感じにくい免震構造の特徴

免震構造は、この3つの構造の中でも最も地震の揺れを抑えることができます。基礎と建物の間に、地面の揺れを伝えないようにする「アイソレータ」、揺れを分散させる「ダンパー」を組み合わせた免震装置を設置することにより、地面の揺れが建物に伝わらないようにします。

コストはかかりますが、高層ビルや高層マンションで採用される方法です。ただしコストがかかるといっても地震による被害を少なくすることができるなら、建物の修繕費を抑えることができます。トータルで考えるとお得かもしれません。

また、免震構造の建物は丈夫なので地震保険の保険料がお得になります。

組み合わせて使っている場合もある

3つの構造をお伝えしましたが、どれか一つの方法しか採用されていないということはなく、最近では組み合わせて使うことも増えてきています。

たとえば免震構造はコストがかかるため、一般の住宅を丈夫にするために耐震構造と制震構造を組み合わせます。また、揺れが大きくなりがちな高層マンションであれば、制震構造に免震構造を組み合わせ、より安心の構造となります。

耐震基準についても知っておこう

ここで、今後マンションを購入するときのために、耐震基準についても理解を深めておきましょう。現在建築されているマンションは新しい耐震基準に沿って建てられているので、特に心配する必要はありません。

よく調べないといけないのが中古マンションを選ぶときで、1981年以前に建てられたマンションであれば注意が必要です。

新耐震基準は、1981年に制定されました。1981年(昭和56年)5月31日までに適用されていたものを「旧耐震基準」、同年6月1日から適用されているものを「新耐震基準」といいます。

耐震基準とは読んで字の如く地震に耐える力のことをいいますが、1981年を境にこのような違いが生まれました。

  • 旧耐震基準:震度5強の地震に耐える力
  • 新耐震基準:震度6強〜7でも倒壊しないこと

この基準が間違っていなかったことは、阪神・淡路大震災、東日本大震災と2つの大きな地震によってはからずも証明されました。この2つの地震で倒壊した建物の多くは旧耐震基準によって建てられたものでした。

とはいえ、旧耐震基準の建物が全て弱いのかというとそうではありません。耐震基準とは「これ以上の強度で建てなさい」という意味ですから、震度6〜7の地震にも耐えられるような丈夫な建物ももちろんあります。

とはいえ、建築の知識などない一般の人が、建物を見て地震に強いのか分かるはずもないため、簡単な見分け方として、1981年6月以降に建てられたマンションであればより厳しい耐震基準をクリアしているということがわかるのです。

どのマンションが安全?地震に強いマンションチェック

マンションを買ったばかりなのに地震で住めなくなった…などということのないように、丈夫なマンションを手に入れたいものです。どこをチェックすれば良いか、そのポイントについて解説します。

1981年以降に建てられていること

先ほどもお伝えした通り、新耐震基準で建てられたマンションの方が耐震性は高いので、築年数が浅いほど丈夫であると考えられます。中古マンションを購入する場合は価格だけを見るのではなく、建てられたのが1981年以降であることを確認してください。

地盤が強いこと

建物が丈夫であっても、マンションが建てられている土地そのものが脆弱である場合は、地震の被害を受けやすくなります。東日本大地震のときも、液状化現象による被害を受けた建物が多く見られました。

マンションは特に建物そのものが重いですから、その重さを支えられる強い地盤が必要です。地下深くまで杭を打ち込んで地盤を強化しても、周辺道路などが液状化してしまえば、孤立して物資が手に入らなくなるなどの二次被害も起こり得ます。

マンションの建っている土地が丈夫なのか、「住宅地盤情報提供システム GEODAS」などを利用して調べることをおすすめします。

鉄筋コンクリート・鉄骨コンクリートの建物か

マンションの造りは

  • 鉄骨コンクリート
  • 鉄筋コンクリート
  • 鉄骨・鉄筋コンクリート

などがありますが、昨今は脱炭素を目的として「木造マンション」と呼ばれるものが増えてきています。

木造建築は炭素をため、二酸化炭素を排出しないことから国も木造の建物を推進しているのですが、耐震性を重視するならやはり鉄筋コンクリートや鉄骨コンクリートです。

長方形のマンション

一口にマンションといっても、さまざまな形があります。正方形、長方形、L字型、コの字型などの形状がありますが、これらの中で最も丈夫なのは正方形・長方形だといわれています。

まとめ:耐震・免震・制震構造だけでなくマンション選びは地盤も大事!

耐震・免震・制震構造は、それぞれ大きな揺れに強い、揺れを感じにくいなどの特徴がありました。免震構造は揺れを抑えることができますが、コストもかかります。

ただしコストがかかっても地震による被害が少なければ修繕費も抑えられます。初期費用だけでなく、万が一のコストも考えて最適な構造を選ぶことが重要です。

一つの目安として、1981年6月以降に建てられたマンションは、新耐震基準で建てられているので地震には強いです。年月が経つほど耐震性は落ちていきますので、地震への強さを重視するなら、できるだけ築年数が浅いマンションを選ぶことをおすすめします。

また、いくら建物が丈夫でも、マンションが建っている土地そのものが弱ければ地震に耐えられないでしょう。耐震構造を知ることはもちろん、地盤の調査もしっかりしてからマンションを選びましょう。

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