マンション経営に初期費用はどれくらい必要?相場や節約方法を解説

マンション経営

2022年6月3日

土地活用や老後資金の調達方法を考えたとき、選択肢の1つとして注目されているのがマンション経営です。

しかし、マンション経営にはまず手持ちのお金がいくらあればいいのか、必要な初期費用の額も気になるところではないでしょうか。

自己資金0円で、すべてをローンで賄うという方法もあり、税金面の控除などのメリットもあるのですが、リスクも高いので注意が必要です。

この記事では、マンション経営にかかる初期費用にはどんなものがあるのか、相場はいくらかについて解説します。初期費用を低く抑える方法についても紹介するので参考にしてください。

マンション経営に必要な初期費用の額とその相場

ここまで見てきた費用について、具体的な金額の目安はどれくらいなのでしょうか。

マンション物件は高額なため、取得にはローンの借入をすることが一般的です。その場合に用意する頭金は、物件価格の10%〜30%が相場です。

頭金が多いほど返済の負担が減って経営の安定がしやすくなるので、20%くらいは準備しておきたいところです。頭金の額が多いほど、ローンの審査にも通りやすくなります。

例えば3000万円のマンションを購入する場合、ローン頭金の相場は300万円〜900万円です。

頭金以外の、登記費用や各種手数料などの費用の相場は、物件価格の7〜10%。3000万円の物件であれば、21万円〜30万円ほどは見ておきましょう。

これらの費用は、あくまでマンション経営のための初期費用として必要となるものです。自分や家族の生活費などとは別で用意すべきことも忘れないようにしてください。

マンション経営に必要な初期費用とその内訳

では改めて、マンション経営にどのような費用がかかるのか、必要となる初期費用の内訳を見ていきましょう。

費用の種類 内訳
物件の取得 マンション物件取得の頭金
印紙税
不動産取得税
不動産登記費用 登録免許税
司法書士・土地家屋調査士への報酬
手数料 不動産仲介手数料
ローンの事務手数料
ローンの保証料
保険料 火災・地震保険料
その他 入居者募集費用

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

マンション物件取得の頭金

経営するマンションの購入費用は、一棟か区分(一室)かや、立地(地域)や規模、、階数や構造、新築か中古かなどさまざまな条件によって大きく異なります。

数百万円から数億円になるものまでさまざまですが、いずれにしても購入には金融機関からローンで借入を行うのが一般的です。

冒頭でもお伝えしたとおり、自己資金なしでローンを組むことは可能ですが、頭金を用意することで返済の負担を減らすことができます。

印紙税

不動産の売買契約やローン契約の契約書には、印紙税がかかります。印紙税は契約書に収入印紙を貼付して納めます。

不動産売買や金銭の借用などに関する印紙税の額は、契約書に記載された契約金額によって異なります。一部を抜粋して紹介します。

契約金額印紙税額
500万円を超え1千万円以下1万円
1千万円を超え5千万円以下2万円
5千万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円

印紙税額の一覧は国税庁のホームページから確認できます。

不動産取得税

不動産取得税は、文字どおり不動産を取得したときに都道府県によって課される税金です。

税額は、建物については原則として「購入したマンションの課税評価額 × 税率」で算出します。税率は物件の取得日によって異なり、令和6年3月31日までは3%と決まっています。

土地については、令和6年3月31日までは「課税評価額の2分の1 × 税率」で算出します。

課税評価額とは、所在する市町村の長が作成する固定資産課税台帳に記載された価格のこと。「マンションの購入代金」ではないことに注意が必要です。

登録免許税

マンションを購入した場合、法律に基づいて不動産の登記をする必要があります。この登記には、登録免許税を納める必要があります。

マンション購入で必要となるのは、次のような登記です。それぞれ税率も異なります。

登記の種類登記の目的登録免許税率
所有権保存登記新築の建物の所有者を記録する0.4%
所有権移転登記中古の建物の所有者を記録2%
抵当権設定登記ローン借入時に担保権を設定0.4%

登録免許税率は、上記の不動産取得税と同じく、不動産の価格(固定資産課税台帳の価格)にかかるものです。

なお、マンションを新築した場合には、手続きとして1カ月以内にまず「建物表題登記」という登記を行う必要があります。ただしこの登記には登録免許税はかかりません。

司法書士・土地家屋調査士への報酬

上記の不動産登記の手続きは、自分ですることも可能ですが、専門知識が必要であり、登記申請に必要な書類を不足なく揃える必要があります。

たとえば中古マンションの購入で所有権移転登記をする場合には、売主側の権利証や印鑑証明書などが必要となるため、専門家に依頼するのが得策です。

建物表題登記については、土地家屋調査士に、その他の登記については司法書士が専門家なので、それぞれに依頼することとなり、双方への報酬の支払いが必要となります。

報酬の相場は次のようになっています。

  • 建物表題登記 120,000円~
  • 所有権保存登記 20,000円~
  • 所有権移転登記 35,000円~
  • 抵当権設定登記 30,000円~

ただし報酬については、司法書士・土地家屋調査士によってさまざまな料金設定がされています。一般的な住宅より、マンションは規模や課税標準額が大きくなるため報酬額も高くなるよう設定されているところがほとんどです。

また、手続き費用のほかに、日当や立会料、調査料などが別途で設定されているケースもあります。必ず事前に相談のうえ、見積もりを取るなどして確認してください。

不動産仲介手数料

不動産仲介会社を通じて物件を取得する際には、仲介手数料を支払う必要があります。不動産仲介会社は、物件の案内や説明、売主との交渉や契約などのサポートをしてくれる存在です。

手数料の金額は、その上限が宅建業法によって決められています。物件の売買価格と限度額は次のとおりです。

物件の売買価格仲介手数料の上限
200万円以下の部分売買価格の5%
200万円を超え400万円以下の部分売買価格の4%
400万円を超える部分売買価格の3%

たとえば400万円を超える売買価格の場合、単に30%が上限となるわけではないので複雑ですが、次の式で計算できます。

売買価格が400万円を超える場合=売買価格の3%+6万円+消費税

3000万円の物件であれば、105万6千円が仲介手数料の上限です。この限度額を超える手数料を請求されても、支払う必要はありません。

ローンの事務手数料

金融機関からのローン借り入れには、事務手数料がかかります。支払方法には、借入金額に応じて手数料が高くなる「定率型」と、借入額にかかわらず一定の料金がかかる「定額型」の2パターンがあります。

定率型では、1〜3%ほどが相場となっており、執筆時点では2.2%という設定の金融機関が多く見られました。定額制では11万円や22万円、33万円など金融機関によって異なる設定がされています。

ローンの保証料

金融機関から借入をする場合、保証会社による保証を付けるのが一般的です。保証料の支払方法は、金融機関によって異なります。

ローン借入時に一部を前払いし、残りを金利に上乗せする方法では、初期費用として保証料を用意する必要があります。

借入時に保証料を支払う必要がない金融機関もありますが、その場合は、保証料が不要というわけではなく、金利に上乗せされていることが多いです。中には、保証会社を介さないケースもあります。

火災・地震保険料

火災保険や地震保険への加入は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし火災や地震が発生した時のリスクを考えると、加入は必須と言えます。

例えば隣家などから出火し、延焼して被害を被ったとしても、賠償責任を問えるのはその人に重大な過失があると認められた場合のみ。自分の身は自分で守る必要があります。

ただ、どの保険会社の公式サイトを見ても、マンションオーナ―向けの火災保険の具体的な保険料はほとんど公開されていません。補償の範囲やマンションの建つ地域、規模や構造など、さまざまな条件によって保険料は大きく異なるからです。

一棟の場合の大まかな目安としては、年間で20万円〜と考えておきましょう。保険期間が長いほど保険料は割安になりますが、2022年10月以降は最長で5年までの契約となることが発表されています。

入居者募集費用

マンション経営で収益を得るには、当然ながら入居者がいなくてはなりません。仲介業者に入居者を集めてもらうにも、費用がかかります。

賃貸借契約が成立した場合の仲介手数料について、宅建業法では、家賃の1カ月分を上限としています。

そのほか、広告料として家賃の1~2カ月分を支払うのが一般的となっています。とはいえ依頼は必須ではないため、空室のリスクを考えて決めるようにしてください。

マンション経営の初期費用を節約する方法

こうして見てくると、マンション経営には高額な初期費用がかかることがわかります。少しでも安く抑えるにはどうすればいいのかを考えてみましょう。

主な節約方法として、次の6つが挙げられます。

  • 新築でなく中古でリフォームする
  • 仲介業者を通さずに物件を取得する
  • 仲介業者に手数料の値下げ交渉をする
  • 報酬設定の低い専門家を選ぶ
  • 政府系の金融機関から融資を受ける
  • 賃貸併用住宅を建てる

それぞれ具体的に説明していきます。

新築でなく中古物件をリフォームする

改めて説明するまでもなく、マンション物件の取得費用が安いほど初期費用は抑えられます。そのため、新築物件にこだわらないというのも1つの方法です。

中古マンションを必要に応じてリフォームした方が、新築物件より安く済み、利回り(元本に対する収益の割合)も高くなります。

ただ、中古マンションといっても構造や耐用年数、状態などによって新築よりデメリットが大きくなるケースもあるので注意が必要です。

仲介業者を通さずに物件を取得する

マンションの取得には、仲介業者を通さない方法があります。仲介業者を通さなければ、仲介手数料は必要ありません。

仲介業者を通さない方法には、不動産会社など物件の所有者と直に売買契約を結ぶ方法と、所有者から委託された不動産会社が販売代理を行っている物件を取得する方法があります。

仲介業者に手数料の値下げ交渉をする

仲介業者を利用したとして、仲介手数料を安くしてもらえないか交渉するというのも1つの方法です。

宅建業法では手数料の上限が決められていますが、それはあくまで上限であり、値下げ交渉をすることは可能です。

ただし今後の取引を考え、関係が悪化してしまうほどの無理な交渉はしないのが得策です。

報酬の低い専門家を選ぶ

登記を自分で行うのがもっとも費用を節約できる方法です。しかし、現実的には難しいでしょう。

そのため、依頼する司法書士や土地家屋調査士を決める際には、複数の事務所に見積もりを取り、費用が安いところを探すのが得策です。

ただし、サービス内容の違いや相性などもあるため、費用だけで決めるのではなく、相談をして決めることをおすすめします。

政府系の金融機関から融資を受ける

物件の取得にローンを利用する場合、民間の金融機関よりも政府系の金融機関から融資を受ける方が返済が楽になる可能性があります。

日本政策金融公庫や商工中金では、中小企業や小規模事業主への融資にも積極的なのが特徴です。金利も比較的低く設定されています。

ただし融資期間が10年~15年と比較的短いため、月々の返済の負担と収益との兼ね合いを考えて決める必要があります。

賃貸併用住宅を建てる

建物の一部をオーナー宅とする賃貸併用住宅なら、借り入れに住宅ローンが使えます。住宅ローンなら、投資目的の不動産に利用するアパートローンなどより金利が低く、長期で組めるほか、条件を満たせば住宅ローン控除も受けられるメリットがあります。

ただし、自宅部分の床面積が全体の50%以上でなくては住宅ローン控除は適用されません。そのため、賃貸部分が少なくなり、利回りが低くなるなどのデメリットも。どうするかは、初期費用の額だけでなく総合的に判断する必要もあります。

初期費用を把握して堅実なマンション経営を

マンション経営には、物件の取得にかかる費用だけでなく、登記のための税金や専門家への報酬、仲介手数料などさまざまな初期費用がかかります。

大まかな目安としては、ローンの頭金として物件の10~30%、その他の費用に7~10%の費用がかかります。

初期費用を抑えるには、中古物件をリフォームする、不動産会社が持つ物件を直に契約して仲介手数料を節約するなどの方法がありますが、初期費用以外の部分でデメリットが生じる場合もあるため、不動産の専門家などに相談することをおすすめします。

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