賃貸経営にもインボイスは必要?制度がオーナーに与える影響とは

マンション経営

2023年2月8日

2023年10月からインボイス制度が導入されます。インボイス制度とは消費税に関わる制度のことですので、自分は免税事業者だから関係ないと思っている人もいますが、それは大間違いです。免税事業者ほど注意しなくてはなりません。

家賃には消費税がかからないため居住用のアパート、マンションの賃貸経営者には関係のない話ですが、消費税を受け取っている賃貸オーナーの人は今後の対応をどうするか、制度が始まるまでに考えておく必要があります。

そこで、インボイス制度の基礎知識から賃貸オーナーへの影響、どう対応すべきかなどわかりやすく解説します。

インボイスの申請をするかしないか、検討するための参考にしてください。

賃貸経営者のためのインボイス制度の基礎知識

インボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。この適格請求書をインボイスというのです。消費税率と消費税額を売り手が買い手に対して伝える書類です。

インボイス制度が導入されることにより、インボイスの発行がない請求書では消費税の仕入額控除が受けられなくなりますが、インボイスを発行できるのは発行事業者として登録している者のみとなります。

賃貸住宅のオーナーには関係なし

インボイスは消費税についての書類ですから、賃貸住宅だけを所有しているオーナーには特に影響はありません。アパート、マンションなど賃貸住宅の家賃には消費税がかからないからです。

土地の賃料、売却収入、家賃に含まれている駐車場料金などにも影響はありません。

住宅以外の賃貸オーナーには影響あり

消費税がかからないのは、居住用の住宅の家賃のみです。

  • 駐車場
  • 店舗・テナント
  • 事務所
  • 太陽光発電

などの方法で土地活用を行なっている場合は、課税対象です。ですから、インボイス制度の影響を受けます。

インボイス制度が導入された理由

なぜここへきてインボイス制度が導入されたのか、それは消費税の益税問題があったからです。益税問題とは、本来国に収めなくてはならない消費税が事業者の利益になっているという問題です。

現在、消費税を納めなくてはならないのは、課税事業者のみです。免税事業者は消費税を納める必要はありませんが、売り上げに消費税を含めて受け取ることは可能です。たとえば、1,000円のものを消費税込1,100円で販売したとして、100円分の消費税はそのまま利益となります。

買い手は、取引の相手が課税事業者であるか免税事業者であるかを知る手立てはないため、請求書に「消費税」があればそれを含めて支払います。そうすると、本来は国に納めるべき100円が事業者の利益となってしまうため、この問題を解消するためにインボイス制度が導入されました。

課税事業者とならなくても消費税を請求すること自体は可能ですが、支払いをする立場からすると、インボイスを発行してもらえなければ仕入税額控除ができなくなるため、免税事業者との取引をしなくなる可能性が懸念されています。

インボイス制度には猶予期間がある

令和5年(2023年)10月1日からインボイス制度がスタートしますが、猶予期間が設けられています。以下の期間まで、一定額の仕入税額控除が認められることになっています。

  • 令和8年(2026年)9月30日まで:80%
  • 令和11年(2029年)9月30日まで:50%

令和11年10月1日からは、インボイスではない請求書では仕入税額控除ができなくなります。

影響があるのは免税事業者である経営者

すでに課税事業者になっている人はこれまで通り消費税を納税すれば良いので、大きな変更はありません。影響があるのは、免税事業者です。これまでは消費税を納めなくても良かったので、取引先から消費税を受け取っても受け取らなくても双方が損をすることはありませんでした。

しかしインボイス制度が始まると、消費税を仕入税額控除を受けるためには「適格請求書(インボイス)」が必要になります。インボイスがなければ取引先は消費税を計算するうえで不利が生じます。

問題は、課税事業者でなければインボイス登録事業者にはなれず、インボイス登録事業者でなければインボイスを発行できないということです。

インボイスを発行できない場合、取引先は消費税分の割引を求めてくるかもしれません。または、取引そのものが停止され、インボイスを発行できる事業者との契約を選ぶということも考えられます。

免税事業者は、インボイスを発行するために課税事業者になるか、消費税分の割引をするか、なんらかの対応を迫られることになるでしょう。

免税事業者である賃貸経営者がインボイスでとるべき対応

では、賃貸経営者は今後どのような対応をとるべきでしょうか。所有している物件の種類によっても対応が違ってきます。

アパート・マンション経営者は対応不要

賃貸住宅の家賃はそもそも消費税が課されてないので、アパートやマンションのオーナーはインボイスへの対応は不要です。インボイスを発行する必要はありません。

取引先が免税事業者なら対応不要

事務所や店舗など、住宅以外の不動産経営を行なっているオーナーであっても、取引先が免税事業者であればインボイスを発行する必要はありません。そもそも仕入れ税額控除がありませんので、インボイスがなくても不利益を被ることがないからです。

取引先が課税事業者なら自分も課税事業者になる

住宅以外の不動産オーナーで、取引先が課税事業者である場合、インボイスを発行できないと相手方に不利益が生じる可能性があります。対応としては、今は免税事業者であっても、あえて課税事業者になるという選択肢があります。

課税事業者になればインボイスを発行できます。もちろん、消費税も納めなくてはならなくなりますが、これまでの取引先との関係に最も変化が少ない方法です。

賃料の減額を検討する

インボイスを発行できないとなると取引先は仕入額控除ができなくなるため、その分の賃料の減額を求めてくるかもしれません。実質の減収となりますが、相手の要望となれば検討せざるを得ないでしょう。

取引先の数や状況によっては、自分が課税事業者になるよりも、消費税分の減額にした方が手間が少ないかもしれません。課税事業者になるべきか、賃料の減額で対応するか、どちらが有利かはシミュレーションしてみて判断します。

ただし、賃料を減額する場合も、今はまだ消費税分をまるまる減額する必要はありません。先ほど、インボイス制度には猶予期間があるとお話ししました。50〜80%仕入税額控除が認められますので、減額するとしてもその範囲内で十分でしょう。

何もせずいったん様子見もあり

インボイス制度が始まったらどうなるのか、正直なところまだわからない点も多いです。不動産業界のみならず、様々な職種に影響が出る制度ですから、いまだに反対の声が多いのも事実です。

たとえば、駐車場などは立地が重要ですから、消費税の問題だけですぐに撤退するとは考えにくいです。消費税分をまるまる減額しなくても契約を継続してくれる可能性が高いので、今すぐこちらから減額を申し出る必要はないかもしれません。

制度が始まってからインボイスの登録事業者になることは可能ですから、今は様子見で何もしないというのも選択肢の一つです。

インボイスの申請

インボイスの申請は、税務署に「的確請求書発行事業者の登録申請書」を提出しますが、郵送の場合は管轄地域の「インボイス登録センター」に送りますので、間違えないようにしてください。なお、e-Taxでパソコンまたはスマホから電子申請をすることも可能です。

審査を経て、登録通知書が送られてきます。登録番号などが記載されていますので、インボイスを発行する際に使用しましょう。

まとめ:賃貸経営にインボイスが関わるのは住宅以外の不動産経営

インボイス制度は2023年10月1日から始まります。今後は消費税を仕入税額控除するために、インボイス(適格請求書)が必要となりますが、インボイスを発行できるのは発行事業者のみです。

住宅の家賃には消費税がかかりませんので、アパートやマンションのオーナーはインボイスを発行しなくてもOKですが、駐車場やテナントのオーナーはインボイスへの対応が必要になります。免税事業者はインボイスを発行できないため、課税事業者になる等の対応を考えなくてはなりません。

とはいえインボイス制度には猶予期間もありますので、しばらくは様子を見るという選択肢もあります。影響のある免税事業者は、今後の動向を見つつ対応を検討しましょう。

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