賃貸経営で仲介業者に支払う「広告料」とは?手数料との違いも解説
マンション経営
2022年7月7日
“賃貸経営を行う上でまず気になるのが、物件を満室にできるかどうかです。空室がある状態で、ただ待つだけというのはもどかしいですよね。
そんなときの打開策が、不動産会社に特別な広告を出すよう依頼することです。広告はオーナー自身でなく仲介業者が代理で行うのが一般的で、その際に仲介業者に支払うのが広告料です。
ただ、仲介業者にはそもそも「仲介手数料」を支払うこととなっています。「さらに広告料が必要なのか?」というのもちょっと気になる所かもしれません。
そこでこの記事では、不動産賃貸で仲介業者に支払う広告料について、仲介手数料との違いや法的な解釈なども交えて解説していきます。
目次
広告料とは?仲介手数料との違い
賃貸募集の広告をする際に必要となる費用が「不動産広告料」です。単に「広告料」と呼ばれたり、英語の「広告(アドバタイズメント)」を略して「AD」と呼ばれたりしています。
まず「仲介手数料」とは
マンションなどの物件の貸借は、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的。賃貸借契約が決まった場合に物件のオーナーが不動産会社に支払うのが「仲介手数料」です。
賃貸契約の仲介をするには入居者の募集活動が必須なため、通常は広告に必要な費用も仲介手数料に含まれると考えるのが妥当です。
では「広告料」とは
なかには、通常どおりの広告を出しても空室が埋まらなかったり、大手の新聞など、希望する媒体に広告を出すには多大な費用がかかったりすることもあります。
そんなときは、オーナー側が仲介手数料とは別に不動産会社にさらなる料金を支払い、募集に力を入れてもらうのが一般的となっています。これが広告料です。
「広告料」の支払いは必須?
広告料は必須の費用ではありません。とはいえ、空室となっている期間が長かったりする場合には、支払うことで空室を埋められる可能性が高まります。この辺りは後で広告料を支払うメリットとして改めて説明します。
逆に、学生の移動や会社員の転勤などが多くなる1~3月あたりは、広告料を支払わずとも入居者は見つかりやすい時期なので、特別な広告を出したりする必要がないかもしれません。
物件の立地条件などが原因で入居者が見つかりにくいのなら、支払うメリットも大きくなるでしょう。
仲介手数料の他に広告料を取るのは違法では?
仲介手数料の額には、国が定めた限度があります。まずはその決まりについて見ていきましょう。
賃貸の仲介にかかる不動産会社への報酬上限
不動産の賃貸の仲介にかかる不動産会社への報酬については、国土交通省の告示により、「家賃の1カ月分」が限度と定められています。
具体的には次のような決まりになっています。
- 貸主・借主の双方からの報酬の合計・・・家賃の1カ月分以内
- それぞれから受け取る報酬額・・・家賃の0.5カ月分以内
ただし、承諾を得た場合には一方から家賃1カ月分の報酬を受け取ることも可能とされています。
広告については上限とは別の特例がある
基本的には、上の項の「家賃1カ月分」が賃貸の仲介において不動産会社が受け取れる報酬額の上限であり、それ以外の報酬を受けることはできません。
ここまでであれば、仲介手数料として家賃1カ月分が支払われているなら、広告料として別途料金を徴収されるのは違法、ということになります。
しかし、これには例外があり、「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」を別に受け取ることは可能ともされています。
つまり、不動産会社が仲介手数料のほかにオーナー側から広告料を受け取ることも、すべてのケースとは限りませんが認められているのです。
広告料を支払うメリットと気になる広告料の相場
では、広告料を出すことのメリットや金額の相場についても見ておきましょう。
広告料を支払うメリットとは
改めて言うまでもないかもしれませんが、広告料を支払うメリットは「入居者が見つかりやすくなる」ことです。
賃貸経営において、1室でも空いた状態で放っておくのは避けたいもの。少しでも早く満室にするには、特別な広告を出すなどして不動産会社に尽力してもらうのが効率的です。
不動産会社も、仲介手数料のほかに広告料が入ることで利益が増えるため、入居者の募集により積極的に動いてくれます。
気になる広告料の相場とは
広告料は、不動産会社が広告を出し、入居者が決まった場合のみ成果報酬のような形で支払います。気になるのはその額ですが、広告料についてはもともと特例のようなものであり、上限は決められていません。
相場としては、家賃の1カ月分~3か月分というケースが多く見られます。地域などによっては、0.5カ月などの場合もあります。
部屋ごとの所在地や間取り、築年数などを掲載した不動産情報(通称「マイソク」)には、広告料がつく物件の場合は右下などの欄に「AD100」などと表記されています。
「AD100」であれば家賃1カ月を100%とした表記です。「AD1」と表記されている場合は、家賃1カ月分ということです。不動産会社で自身の持つ物件に近い物件のマイソクを見て、相場を確認してみることもおすすめします。
広告料の支払いに関する注意点
不動産賃貸の募集にかかる広告料は、前述のとおり違法とは言えないものの、グレーな部分も存在しています。
そのため、広告料の支払を要求された場合には、次のような点に注意してください。
- オーナー側の依頼で行われた広告についての費用か
- 事前や事後に広告料について説明はあったか
- 広告料として納得できる程度の金額か
家賃1カ月分の仲介手数料以外で報酬を受け取れるのは、前述の国交省の告示で「依頼者の依頼によって行う広告」についてだと記されています。
つまり、オーナー側が依頼もしていないのに不動産会社が事前・事後の説明もなく当然のように広告料を請求する、というのは、上記に反することになるのです。
また、金額についても、上限の定めがないことから、多額の請求をしてくる業者もないとは言えません。もちろん、特別な広告も出されていないのに広告料を請求することも違法です。
費用がかかっても「空室を埋めるには致し方ない」と納得できるかどうか、広告料の相場と、自身の持つ物件の立地や時期などによる入居者探しの難易度とを踏まえて判断してください。
とはいえ、空室を埋めるには広告料を支払わざるを得なくなっているような現状もあります。納得がいけばよいのですが、弱みにつけ込むような業者には要注意。その不動産業者との取引を考え直すというのも1つの方法です。
広告料の支払いは説明をしっかり受けてから
賃貸物件の仲介を依頼する不動産に支払うのは、家賃1カ月分を上限とした仲介手数料のみと法で定められています。
しかし、特別な広告に費やした費用に関しては、不動産会社が別途料金を受け取ることも認められているのが現状です。
とはいえ、法外な額の請求だったり、頼んでもいなければ何の説明もないのに当然のように広告料を請求されたりした場合には、しっかりと説明や根拠の提示を求めましょう。
空室を埋めるには相応の広告料の出費も必要となるケースもありますが、あくまでも納得の上で支払うようにしてください。