賃貸マンションの建て替えのメリットは?流れや成功のポイントを解説

マンション経営

2022年7月12日

賃貸マンションも年月を重ねるとだんだん老朽化していきます。古い物件は人気も落ち、入居者も少なくなっていき空室が目立つようになりますが、建て替えすることによって再び経営を軌道に乗せることが可能です。

とはいえ、建て替えには多額の費用と時間がかかりますので、慎重に計画し作業を進めていかなくてはなりません。最も手間がかかるのは入居者の立退問題です。

今回は、賃貸マンションの建て替えはどのように進んでいくのか、その流れを説明するとともに、立ち退きで注意すべき点についてお話しします。建て替えによって収益性がアップし、より良い経営をしていけるように、ぜひ参考にしてください。

賃貸マンションを建て替える必要性

賃貸マンションの建て替えには多額の費用がかかります。いくら老朽化が心配でも簡単には行いにくいものですが、それでも建て替えをした方が良い理由があります。

マンションには寿命がある

マンションは非常に強固な作りとなってはいるものの、寿命があります。しかしその寿命には2つあり、それぞれの違いを知っておくことが大切です。

【法廷耐用年数】
法廷耐用年数とは法律で決められている寿命のことで、建物の構造によって違いがあります。たとえば木造のアパートなら22年、鉄筋コンクリート造のマンションなら47年という年数が決められています

これは、税法上の減価償却年数であり、マンションの場合には減価償却がゼロになるまでの年数が47年ということです。あくまでも税金の計算をする上で必要な数字であり、この年数で建物が使えなくなるというわけではありません。

【建物の物理的寿命】
建築の方法次第ではありますが、耐震基準に沿って作られた鉄筋コンクリート造のマンションは100年以上もつといわれています。

国土交通省が平成25年8月に行った「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」という調査によると、鉄筋コンクリート造の一般住宅の耐用年数は120年、外装仕上げによって延命すれば150年まで伸ばせるということです。

耐震基準の問題

地震国である日本では、建物を建設する際の耐震基準が定められています。その基準が1981年6月に改められました。

ですから、新耐震基準で建設されているマンションは特に問題ないのですが、旧耐震基準で建設されているものについては大きな地震が来たときに耐えられない可能性があるのです。

たとえば1980年に建設されたマンションは現在築40年を超えていますが、建物の老朽化も進んできています。

普段住んでいる分には問題なくとも、地震で大きな被害が出る可能性があるため、今のうちに建て替えをした方が安心だということです。

デザインが古く使いづらくなっている

マンションにも流行、トレンドがあります。外観はもちろん、内装や間取りのニーズにも変化が出てきていますので、あまり古いマンションは人気がなく空室が目立つようになります。

たとえば4階建てなのにエレベーターがなかったり、ベランダが狭くてエアコンの室外機を設置しにくいなど使い勝手が悪いものもあります。

現在のニーズにあっていないマンションは住みにくく感じるため、空き室を作らないようにするには建て替えをした方が良い場合があるのです。

建物内外の設備の劣化

建物は鉄筋コンクリートで作られているので安全だとしても、内装や設備の経年劣化は避けられません。骨組みには問題なくとも、各居室で故障する箇所が増えてくれば建て替えを余儀なくされるでしょう。

また、外壁に日々が入るなどの問題も出てきます。外壁は気候の影響もあるため、立地によっては通常よりも早く劣化してしまうこともあります。設備を入れ替えたり外壁を修復しながら使っていく方法もありますが、いずれは思い切って建て替えをする必要があります。

賃貸マンションを建て直すメリット

マンションの建て替えはお金もかかりますし、計画を立てるのも大変です。しかし、それでもマンション経営を続けていくためには建て替えをした方がメリットが大きい場合もあります。

収益がアップする可能性

日本では古い建物よりも新築が好まれます。マンションも例外ではなく、築年数が浅いほど人気があります。

そのエリアでニーズのあるデザイン、設備を取り入れた「新築マンション」に生まれ変わることで空室も埋まりやすくなりますし、家賃を上げることも可能です。結果として収益もアップするでしょう。

節税効果も期待できる

鉄筋コンクリート造のマンションの法定耐用年数は47年ですので、築47年を超えてしまうと減価償却ができなくなります。

空室が増えてくれば収益が減ってしまいますが、減価償却ができないため利益は高くなり、結果として支払うべき税金が増えてしまうときがあります。

ですので、その前に建て替えをすれば改めて減価償却ができるようになります。建ぺい率等の問題で建て替え前よりも部屋数が減ってしまう可能性はあるものの、減価償却による節税効果のメリットは大きいでしょう。

売却するという方法もあり

建て替えをした場合の収益性を考え、部屋数が十分に確保できないなどの理由で経営が厳しくなる場合には売却するという方法もありです。

築年数によっては売却金額が抑えられてしまう可能性もあるものの、今後もそのまま所有し続けたときの維持費とのバランスによっては「今」売る方が得策かもしれません。

賃貸マンションの建て替え作業の流れ

それでは、具体的にどのようにして建て替え作業が進んでいくのか、流れについて説明します。計画から実際に建築が完了するまで4〜5年かかることもあります。

着工予定の数年前から計画を立てる

マンションの建て替えには時間とお金がかかります。マンションの解体と建設だけでなく、現在の住民の立ち退き問題もあります。ですから、工事の着手予定から逆算して2〜3年前から計画を立て始めます。

容積率等から部屋数を考える

建築当時は問題なかった建物も、その後の条例改正等により建ぺい率や容積率が変わってしまっている場合があります。建て替えをすることによって現在の建物の大きさを維持できないことがあり、結果として部屋数が減ってしまう可能性があります。

部屋数が減ればその分収益も下がってしまうため、間取りと部屋数をよく考えなくてはなりません。場合によっては、ファミリータイプだったお部屋を単身者用に変更して部屋数を増やすなど、収益性を確保するための対策が必要です。

新規入居者の募集をストップする

建て替えすることを決めたら、同時に新規入居者の募集を打ち切りにしなくてはなりません。今入居してもらっても、2〜3年後には出ていかなくてはならないからです。

しかし収益性を考えてギリギリまで満室にしておきたい場合には、「定期借家契約」で期限を決めて入居者を募集するという方法もあります。

現在住んでいる人への立退要請

新規募集を停止したら、現在住んでいる人たちへ立退の話をしなくてはなりません。次の住居を見つける必要があることから、立退の1年前、どんなに短くても半年前には伝えます。

日本では借主の立場が強いため、立退を要請するためには正当な理由が必要ですが、マンションの老朽化による建て替えは正当な理由とはなりにくいのです。そのため、立退要請と同時に立退料を提示するのが一般的です。

解体工事と新築工事

全ての入居者が退去したら解体工事が始まります。マンションの大きさにもよりますが、新しいマンションが出来上がるまで1年〜1年半ほどかかるでしょう。

賃貸マンションの建て替えに必要な費用の計算

賃貸マンションの建て替えには、大きく分けて

  • 立退料
  • 解体工事費
  • 新築工事費

この3つが必要です。

入居者分の立退料

立退料については明確な基準はないものの、引っ越し費用や移転先での不動産仲介手数料、敷金・礼金などの支払いに充てるお金として、家賃の6ヶ月分〜1年分くらいが目安となります。家賃が10万円の物件なら60万円〜120万円ですが、1戸あたり100万円ほどを見込んでおき、なるべくスムーズに話を進めて50万円程度におさめたいところです。

マンションの解体工事にかかる費用

鉄筋コンクリート造のマンションであれば、坪単価は7〜8万円ほどになります。ただし、重機が入りにくい場所や工事に手間がかかる場合などは費用が上乗せされる場合があります。

新築マンションにかかる費用

解体できたら新たにマンションを建てます。新築工事費の坪単価は100万円〜200万円です。立地条件やマンションの規模によっても違ってきますが、工事費の他に税金など諸経費も発生しますので、その分も見込んで費用を確保しておく必要があります。

坪単価に幅がありますので、複数の会社から見積もりを取ってよく検討してください。

賃貸マンション建て替え時に注意すべきこと

賃貸マンションの建て替えをスムーズに進めるために、以下の点に注意をしてください。立ち退き問題はこじれると裁判にまで発展することもありますので、慎重に進めることが大切です。

建て替えは立ち退き要請の理由としては弱いことを覚えておく

先ほども説明した通り、老朽化による建て替えは立退の理由としては弱いものです。入居者に立退を強制することはできないため、その代わりに立ち退き料を支払って他の物件を探してもらうのです。

立退がうまくいかないと工事の着工もできないため、交渉をスムーズに進めるためにも、家主の方が立場が弱いのだということを忘れないことが大切です。

立ち退きの話は最初が肝心!

まずは建て替えについての説明を文書で説明することから始まりますが、この文書がとても重要です。ここで手を抜いてしまうと入居者に反感を持たれてしまいますので、このままでは建物自体が危なくなること、入居者のためにも建て替えが必要であることを丁寧に説明しましょう。

誠意を持って一人一人に説明する

家を出ていってくださいという話をするのですから、交渉を文書だけで終わらせてはいけません。文書はあくまでもきっかけです。そのあとで、入居者一人一人に丁寧に説明をして回りましょう。

このとき、会議室などを押さえて住民全体に説明するのではなく、一戸ずつ回るのがポイントです。人は集団になると大きな力を発揮するため、入居者を一度に集めると立ち退き反対派が団結してしまう恐れもあるからです。

そうならないようにするため、また、すんなりと立ち退きに同意してもらうためにも、誠意を持って個別に説明するようにしてください。

まとめ:賃貸マンションの建て替え成功の鍵は立ち退き交渉にあり

賃貸マンションの建て替えは、計画から含めると完成する前でに4〜5年かかる場合があります。建物が古くなると空室も増えてきますので、収益力が低下していきます。建て替え費用がかかっても新築した方が収益がアップすることもあるため、節税効果とのバランスなども考慮して計画を立てましょう。

最も慎重に行わなければならないのは、立退交渉です。ここでこじれてしまうと立退料を上乗せしなくてはならなくなったり、最悪の場合、裁判沙汰になってしまうこともあるからです。

文書で概要を説明した後、一戸ずつ回り誠意を持って丁寧に説明を行います。すんなり立退が完了すれば、後の工事もスムーズに進むでしょう。

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